ガロア理論とは何か

ガロア理論

一言で述べる「ガロア理論」

ガロア(1811-1832)の「ガロア理論」について、 世間の一部では「5次方程式が一般には解けないことの理論」と勘違いしているようです。そもそも5次方程式が一般に解けないことは、 アーベル(1802-1829)が示しました。ガロア理論という言葉の柱になる定理は、 後で述べる「ガロアの基本定理」および「方程式の可解性」に関する定理でしょう。

\(f(x)\)を係数が有理数の1元\(n\)次方程式とすると、代数学の基本定理によって\(f(x)\)は複素数の範囲で1次式の積に分解されます。さらに\(f(x)\)が既約とすると、完全体という性質から\(f(x)=0\)は重根をもたないことになります。そこで、根全体の集合を\(Ω\)、有理数全体の集合を\(\boldsymbol{Q}\)とし、

\(\boldsymbol{Q}(Ω)=\left\{\frac{h(a_1,a_2,\cdots ,a_m)}{g(b_1,b_2,\cdots ,b_n)}|a_1,\cdots ,a_m,b_1,\cdots ,b_n\in Ω,g(b_1,\cdots ,b_n)\neq 0\right\}\)

とおきます。ここで、\(h(x_1,x_2,\cdots,x_m)\)と\(g(x_1,x_2,\cdots,x_n)\)はそれぞれ有理数係数の多項式全体を動くものとします。

このように定めることによって、\(\boldsymbol{Q}(Ω)\)は複素数全体の集合\(\boldsymbol{C}\)に含まれる体(たい)になります。ちなみに\(K\)が体であるとは、\(K\)は演算+に関して0を零元(単位元)とする加法群(可換群)で、\(K-\{0\}\)は演算・(積)に関して1を単位元とする可換群で、\(K\)は分配法則も成り立つときにいいます。なお群の定義と基礎的事項等に関しては、「数学の『群』とはどのようなものなのか」で丁寧に説明しています。

明らかに、複素数全体の集合\(\boldsymbol{C}\)も有理数全体の集合\(\boldsymbol{Q}\)も体になります。そして、\(\boldsymbol{Q}\)は\(\boldsymbol{Q}(Ω)\)の部分体で\(\boldsymbol{Q}(Ω)\)は\(\boldsymbol{C}\)の部分体です。ちなみに\(K\)が体\(L\)の部分体であるとは、\(K\)は体\(L\)の部分集合で、\(L\)と同じ演算+と・に関して体になるときにいいます。

いま体\(K\)に対し、\(K\)から\(K\)への全単射(上への1対1写像)\(f\)が2つの条件

\(f(x+y)=f(x)+f(y),f(x\cdot y)=f(x)\cdot f(y)\)

を満たすとき、\(f\)を体\(K\)の自己同型写像といいます。そして、体\(K\)の自己同型写像全体を\(\rm Aut \it (K)\)で表すと、\(\rm Aut \it (K)\)は写像の合成に関して群になります(単位元は\(K\)上の恒等写像)。この群を一般に体\(K\)の自己同型群といいます。

上で用いた記法のもとでガロア理論を一言で述べると、\(\boldsymbol{Q}(Ω)\)の部分体全体と\(\rm Aut \it (\boldsymbol{Q}(Ω))\)の部分群全体は、後で述べるような美しい関係をもった1対1の対応が付くこと(ガロアの基本定理)。さらに、\(f(x)\)が代数的に解ける(\(f(x)\)の根(解)は\(f(x)\)の係数と四則計算と根号記号\(\sqrt[r]{}\)で表せる)ためには、\(\rm Aut \it (\boldsymbol{Q}(Ω))\)が可解群(後で説明)であることが必要十分条件になることです。

拙著「今度こそわかるガロア理論」(講談社)では、線形代数と微分積分以外を一切仮定することなく集合と写像の説明や代数学の基本定理の証明から始めて、ガロア理論の導入に必要な群、環、体の説明を経て、一般的な表現で述べた「ガロアの基本定理」、および上で述べた\(f(x)\)が代数的に解けるための必要十分性を、一切の論理的なギャップが無い形で述べました。とくに、「明白」や「明らか」などの言葉は極力排し、また例を多く紹介しました。さらに、

\(f(x)=x^7-154x+99\)

の\(\boldsymbol{Q}\)上のガロア群が\(GL(3,2)\)(体\(\boldsymbol{Z}_2\)上の3次線形群)という単純群(それ自身と単位群以外に正規部分群をもたない群)になることを確かめた、Erbach、 Fischer、 Mckayの論文(J. Number Theory 1979年)の一部を紹介し、多項式のガロア群を置換群の性質を用いて計算機による因数分解で決定する一つの方法を説明しました(論文では\(GL(3,2)\)の代わりに群として同型な\(PSL(2,7)\)を記述)。

もちろん、その論文を紹介する目的の一つには1元\(n\)次方程式のガロア群の決定方法の紹介もありましたが、他に一つの信念がありました。それは、方程式の根(解)の置換を最初に考えたラグランジュの研究を発展させたアーベルの研究では、本質的にガロア群が\(n\)次対称群になる場合のみを対象としていました。そして、ガロア理論がガロア理論たる本質は、個々の方程式に対するガロア群を考えていたのです。そこで多くのガロア理論の書にあるような、5次の対称群がガロア群になる方程式の例や存在で書を完結させることは、学生時代にガロアの生き方に憧れた私としては歯痒い気持ちをもったのです。

以下述べる事項は、拙著「今度こそわかるガロア理論」にすべて最初から理解できる証明を述べました。なお本稿では、表には出ない環の基礎的事項の説明は省略します。

群論の基礎的事項

まず\(G\)を群、\(H\)を\(G\)の部分群とするとき、\(G\)のすべての元\(g\)に対し、

\(g^{-1}Hg=H\)、すなわち\(Hg=gH\)

が成り立つとき、\(H\)を\(G\)の正規部分群といいます。このとき、\(G\)の任意の元\(x,y\)に対して、

\((Hx)(Hy)=H\{x(Hy)\}=H\{(xH)y\}\) \(=H(Hx)y=(Hx)y=H(xy)\)

となります。そこで、任意の剰余類\(Hx=Hx'\)と\(Hy=Hy'\)に対して\(Hxy=Hx'y'\)、すなわち剰余類\(Hxy\)が一意的に定まるのです。この演算によって、剰余類全体\(\{Hg|g\in G\}\)からなる集合は群になることが分かります。これを\(G\)の正規部分群\(H\)による剰余群といい、 記法として\(G/H\)で表します。

一般に群\(G\)において、単位元\(e\)だけからなる単位群\(\{e\}\)と\(G\)自身は\(G\)の正規部分群であり、それらを自明な正規部分群といいます。群\(G\)が自明でない正規部分群をもたないとき、\(G\)を単純群といいます。\(n\ge 5\)のとき交代群\(A_n\)(\(n\)文字上の偶置換全体からなる群)は単純群であり、拙著『今度こそわかるガロア理論』(講談社ブルーバックス)ではこの証明について、素朴な置換群論的な証明を述べています。

次に、1元\(n\)次方程式が解けるか否かに本質的に関わる事項として、可解群というものがあります。一般に群\(G\)の元\(a,b\)に対し、 \(a\)と\(b\)の交換子\(\lbrack a,b\rbrack\)を次のように定めます。

\(\lbrack a,b\rbrack =a^{-1}b^{-1}ab\)

また、 群\(G\)の部分群\(A\)、\(B\)に対し、\(A\)と\(B\)の交換子群\(\lbrack A,B\rbrack\)を次のように定めます。

\(\lbrack A,B\rbrack =\{\lbrack a,b\rbrack|a\in A,b\in B\}\)で生成された\(G\)の部分群
   \((=\{\lbrack a,b\rbrack|a\in A,b\in B\}\)を含む\(G\)の最小部分群)

そして、\(\lbrack G,G\rbrack\)を\(G\)の交換子群といい、

\(D_0(G)=G,D_1(G)=[G,G],D_{i+1}(G)\) \(=[D_i(G),D_i(G)]\) \((i=1,2,3,\cdots)\)

と定めます。このとき、\(G\)の部分群の列

\(G\supseteq D_1(G)\supseteq D_2(G)\supseteq D_3(G)\supseteq \cdots\)

を\(G\)の交換子群列といい、\(D_r(G)=\{e\}\)(単位群)となる\(r\)が存在するとき、\(G\)を可解群といいます。次の定理は、可解群の本質を語っています。

群\(G(\neq\{e\})\)が可解であるためには、\(G\)の部分群の列

\(G=\boldsymbol{N}_0\supsetneq \boldsymbol{N}_1\supsetneq \cdots\supsetneq \boldsymbol{N}_r=\{e\}\)

があって\(r\geq1\)、 各\(\boldsymbol{N}_i\)は\(\boldsymbol{N}_{i-1}\)の正規部分群で(\(i=1,2,\cdots ,r\))、 かつ\(\boldsymbol{N}_{i-1} / \boldsymbol{N}_i\)は可換群であることが必要十分な条件である。

体の基礎的事項

一般に体\(K\)とその単位元1について、

\(n\cdot1=1+1+1+\cdots +1(1\)を\(n\)個加えたもの\()=0\)

となる自然数\(n\)があるとき、そのような\(n\)の最小の値を\(K\)の標数といいます。また、そのような自然数\(n\)がないとき、\(K\)の標数は0であるといいます。直ぐに分かる性質として、体の標数は0か素数です。また、有限体(有限個の元からなる体)の標数は素数です。

次に、体\(L\)が体\(K\)の拡大体、すなわち\(K\)は\(L\)の部分体であるとします。\(L\)の元\(α\)が\(K\)上の(体\(K\)の元を係数とする)ある多項式\(f(x)(\neq 0)\)の根であるとき、\(α\)は\(K\)上代数的であるといい、 そうでないとき超越的であるといいます。また、\(L\)のすべての元が\(K\)上代数的のとき、\(L\)は\(K\)の代数拡大体であるといいます。

体\(L\)が体\(K\)の拡大体であるとき\(L\)は\(K\)上の線形空間となり、この線形空間の次元を\([L:K]\)で表して、\(L\)の\(K\)上の次数といいます。とくに\([L:K]\)が有限のとき、\(L\)は\(K\)の有限次拡大体といいます。このとき、\(L\)は\(K\)の代数拡大体になります。

次に、体\(K\)上の1変数多項式\(f(x)\)が、\(K\)の拡大体\(L\)において、

\(f(x)=a(x-α_1)(x-α_2)\cdots (x-α_n) (a\in K,α_i\in L)\)

と1次式の積に分解されるとき、\(L\)は\(f(x)\)の分解体といいます。また(\(f(x)\)の分解体はいろいろ考えられるものの)、\(L\)の部分体で\(f(x)\)の分解体となるものは体\(K(α_1,α_2,\cdots ,α_n)\)(\(K\cup \{ α_1,α_2,\cdots ,α_n\}\)を含む\(L\)の最小の部分体)を必ず含みます。そこで、 体\(K(α_1,α_2,\cdots ,α_n)\)を\(L\)における\(f(x)\)の最小分解体といいます。

さらに、\(f(x)\)を体\(K\)上の\(n\)次多項式とするとき\((n\geq 1)\)、\([L:K]\leq n!\)となる\(f(x)\)の分解体\(L\)は存在し、\(f(x)\)の\(K\)上の最小分解体は(\(K\)の拡大体の構造として)一意的に定まります。

\(\boldsymbol{C}\)の部分体\(\boldsymbol{Q}(\sqrt{3} +\sqrt{2})\)は、\(\boldsymbol{Q}\)上の多項式\(x^4-10x^2+1\)の最小分解体です。なぜならば、

\(x^4-10x^2+1=(x-\sqrt{2}-\sqrt{3})(x-\sqrt{2}+\sqrt{3})(x+\sqrt{2}-\sqrt{3})(x+\sqrt{2}+\sqrt{3})\)

\(\sqrt{3}-\sqrt{2}=\frac{1}{\sqrt{3}+\sqrt{2}}\in \boldsymbol{Q}(\sqrt{3}+\sqrt{2})\)

が成り立つからです。

分離的拡大

体\(L\)が体\(K\)の拡大体で\(L\)の元\(α\)が\(K\)上代数的であるとき、(環に関する議論を経て、)

\(f(α)=0\)、

\(f(x)=x^n+a_1x^{n-1}+a_2x^{n-2}+\cdots +a_{n-1}x+a_n\)

となる\(K\)上の既約多項式\(f(x)\)が一意的に存在することが分かります。そして、これを\(α\)の\(K\)上の最小多項式といい、\(\rm Irr \it (α,K)\)で表します。\(\rm Irr \it (α,K)\)が分解体において重根をもたないとき\(α\)は\(K\)上分離的といい、そうでないとき\(α\)は\(K\)上非分離的であるといいます。

また、体\(K\)の代数拡大体\(L\)のすべての元が\(K\)上分離的であるとき、\(L\)は\(K\)上分離的(拡大)であるといいます。さらに、体\(K\) のすべての代数拡大体が\(K\)上分離的であるとき、\(K\)は完全体であるといいます。これに関しては、次の定理が成り立ちます。

有限体と標数0の体は完全体である。

正規拡大とガロア拡大

体\(K\)の代数拡大体の元\(α,β\)に対して、\(\rm Irr \it (α,K)=\rm Irr \it (β,K)\)が成り立つとき、\(α\)と\(β\)は\(K\)上(互いに)共役であるといいます。また、体\(L\)が体\(K\)の正規拡大であるとは、\(L\)は\(K\)の代数拡大で、\(L\)の任意の元\(α\)に対し、\(L\)は\(\rm Irr \it (α,K)\)の分解体になっているときにいいます。

体\(K\)上の多項式\(f(x)\)の\(K\)上の最小分解体を\(L\)とすると、\(L\)は\(K\)上の正規拡大になることが分かります。

次に、\(L\)が体\(K\)の拡大体であるとき、

\(\rm Aut \it _K(L)=\{σ\in \rm Aut \it (L)|σ\)は\(K\)上では恒等写像\(\}\)

も写像の合成に関して群になりますが、\(L\)が\(K\)の正規拡大という条件を付けて\(\rm Aut \it _K(L)\)を用いることにして、これを\(L\)の\(K\)上のガロア群といいます。そして、次の定理が成り立ちます。

\(L\)を体\(K\)の有限次正規拡大体とするとき、以下が成り立つ。

(ⅰ)\(L\)の任意の元\(α\)に対し、

\(α\)と\(K\)上共役な元全体\(=\{σ(α))|σ\in \rm Aut \it _K(L)\}\)

(ⅱ)\(M\)が\(K\)と\(L\)の中間体のとき、

\(M\)は\(K\)上正規拡大

\(\Leftrightarrow\)すべての\(σ\in \rm Aut \it _K(L)\)について\(σ(M)=M\)

目標の定理と例

最初にいくつかの定義を述べます。\(K\)が体、\(G\)が\(K\)の自己同型群\(\rm Aut \it (K)\)の部分群であるとき、

\(\{ a\in K|\)すべての\(σ\in G\)に対し\(σ(a)=a\}\)

を(\(K\)における)\(G\)の不変体と呼んで、\(K^G\)で表します。実際、\(K^G\)は\(K\)の部分体になります。

逆に\(L\)が体\(K\)の拡大体であるとき、

\(\{ σ\in \rm Aut \it (L)|\)すべての\(a\in K\)に対し\(σ(a)=a\}\)

を(\(\rm Aut \it (L)\)における)\(K\)の不変群と呼んで、\(\rm Aut \it (L)^K\)で表します。実際、\(\rm Aut \it (L)^K\)は\(\rm Aut \it (L)\)の部分群になります。

一般に体\(L\)が体\(K\)の分離的正規拡大であるとき、\(L\)は\(K\)のガロア拡大といいます。以上の準備のもとで、次の定理が成り立ちます。

ガロアの基本定理

\(L\)は体\(K\)の有限次ガロア拡大体とする。\(M\)を\(K\)と\(L\)の中間体とすると\(L\)は\(M\)の有限次ガロア拡大体となり、\(K\)と\(L\)の中間体\(M\)全体と\(G=\rm Aut \it _K(L)\)の部分群\(H\)全体との間に、

(ア)\(M=L^H\Leftrightarrow H=G^M=\rm Aut \it _M(L)\)

となる1対1対応がある。さらに(ア)の対応のもとで、

(イ)\(M\)が\(K\)のガロア拡大\(\Leftrightarrow G^M\)は\(G\)の正規部分群

が成り立ち、 このとき群としての同型

\(\rm Aut \it _K(M)\simeq G/G^M\)

が成り立つ。

いま、\(K\)を標数0の体とし、\(f(x)\)を\(K\)上の重根をもたない多項式とします。このとき\(L\)を\(f(x)\)の\(K\)上の最小分解体とすると、\(L\)は\(K\)上のガロア拡大となります。このとき\(L\)の\(K\)上のガロア群\(\rm Aut \it _K(L)\)を\(f(x)\)の\(K\)上のガロア群といい、\(\rm Gal \it _K(f)\)で表すことにします。\(f(x)=0\)の根全体の集合を

\(Ω=\{α_1,α_2,\cdots ,α_n\}\)

とすると、\(\rm Gal \it _K(f)\)は\(Ω\)上の置換群と見なせることが分かります。

有理数体\(\boldsymbol{Q}\)上の多項式\(f(x)=x^4-2\)について、\(f(x)=0\)の根全体の集合\(Ω\)上の置換群\(G=\rm Gal \it _\boldsymbol{Q}(f)\)を求め、また上の定理におけるガロア群と拡大体の関係も合わせて図示します。

\(x^4-2=(x-\sqrt[4]{2})(x-\sqrt[4]{2}i)(x+\sqrt[4]{2})(x+\sqrt[4]{2}i)\) \((i=\sqrt{-1})\)

\(Ω=\{\sqrt[4]{2},\sqrt[4]{2}i,-\sqrt[4]{2},-\sqrt[4]{2}i\}\)

\(f(x)\)の最小分解体\(=\boldsymbol{Q}(\sqrt[4]{2},i)\)

いま、\(G\)の任意の元\(g\)に対し、

\(g(\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2}\)か\(\sqrt[4]{2}i\)か\(-\sqrt[4]{2}\)か\(-\sqrt[4]{2}i\)

\(g(i)=i\)か\(-i\)

であることに留意します。上2式で\(g\)として可能なものは8(=4×2)通りあって、\(|G|=8\)であるので、 次の\(σ\)と\(τ\)によって\(G\)は生成される(\(G\)のすべての元は\(σ\)と\(τ\)いくつかの合成として表せる)としてよいことが分かります。(\(G\)は位数8の二面体群と呼ばれる群で、 4次対称群\(S_4\)のシロ-2部分群と置換群として同型です。)

\(σ(\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2}i\)、\(σ(i)=i\) \((|σ|=4)\)

\(τ(\sqrt[4]{2})=\sqrt[4]{2}\)、\(τ(i)=-i\) \((|τ|=2)\)

ここで、

\(στ=τσ^3\)、\(σ^2τ=τσ^2\)、\(σ^3τ=τσ\)

\(G=\{e,σ,σ^2,σ^3,τ,στ,σ^2τ,σ^3τ\}\)

となって、\(G\)の真部分群は次の\(\boldsymbol{N}_1\)、\(\boldsymbol{N}_2\)、\(\boldsymbol{N}_3\)、\(H_1\)、\(H_2\)、\(H_3\)、\(H_4\)、\(H_5\)、の8個です。そのうち\(\boldsymbol{N}_1\)、\(\boldsymbol{N}_2\)、\(\boldsymbol{N}_3\)、\(H_1\)は\(G\)の正規部分群です。

\(\boldsymbol{N}_1=\{e,σ,σ^2,σ^3\}\)

\(\boldsymbol{N}_2=\{e,σ^2,τ,σ^2τ\}\)

\(\boldsymbol{N}_3=\{e,σ^2,στ,σ^3τ\}\)

\(H_1=\{e,σ^2\}\)

\(H_2=\{e,τ\}\)

\(H_3=\{e,στ\}\)

\(H_4=\{e,σ^2τ\}\)

\(H_5=\{e,σ^3τ\}\)

そして、\(G\)の部分群と\(\boldsymbol{Q}(\sqrt[4]{2},i)\)の部分体の対応は次の図になります。

ガロア理論-図1
ガロア理論-図2

もう一つの目標の定理は次です。

\(f(x)\)を\(\boldsymbol{Q}\)上の多項式とするとき、

\(f(x)\)が代数的に解ける\(\Leftrightarrow \rm Gal \it _\boldsymbol{Q}(f)\)は可解群

代数的に解けない方程式の例

(1) \(p\)を5以上の素数とするとき、

\(f(x)=(x^2+p)(x-2p)(x-4p)(x-6p)\cdots (x-2(p-2)p)+p\)

とおくと、\(f(x)\)は\(p\)次既約多項式で、\(\rm Gal \it _\boldsymbol{Q}(f)=S_p\)(\(p\)次対称群)となります。よって、 方程式\(f(x)=0\)は代数的に解くことができません。

(2) 前にも紹介した

\(f(x)=x^7-154x+99\)

は既約多項式で、\(\boldsymbol{Q}\)上のガロア群は\(GL(3,2)\)(体\(\boldsymbol{Z}_2\)上の3次線形群)という非可換単純群になります。よって、 方程式\(f(x)=0\)は代数的に解くことができません。

もちろん拙著『今度こそわかるガロア理論』では、(1)と(2)ともに丁寧に説明しました。とくに(1)では、微分と置換群の簡単な知識を使って、代数的に解けない\(p\)次方程式の作り方を誰にでも分かるように述べました。